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乙隈 早馬祭
 
 平成29年10月17日(火曜日)に乙隈で早馬祭が行われました。天満神社の早馬祭は、かつては青年団を中心に行われていました。現在は小中学生の児童・生徒によって、1頭の早馬が担がれ地区内を巡行します。
 乙隈の早馬祭は、当番となった隣組が主体となって行われます。本年は、乙隈区の一番北に位置する「1組」が当番でした。隣組長さんが座元としての役割を担い、馬作りの日程などを決めます。馬作りの作業は、近年の人口減少などにより二日にわたり行われることもあるとのこと。特に組内の軒数や人数が少ない地区は、その作業が大変であり、ご婦人方も加勢に加わると伺いました。馬作りは、乙隈公民館前の広場で行われています。

 今回は、馬作りの段階から取材させていただきました。

 

【馬作り(一日目)】

 平成29年10月14日(土曜日)に馬作りが行われました。当番の組は1年前に刈り取った稲藁を干し、乾燥させて納屋や倉庫に保管します。このように材料を含めてすべて準備が当番した隣組によって行われます。1頭の馬を作るのに大量の稲わらを使います。当日は、軽トラック4~5台分の藁が乙隈公民館広場に運び入れられました。また、作業に掛かる前には「お清め」のために全員が、お神酒・塩・イリコをいただきます。お神酒は少し口に含む程度で、残りは稲藁に掛けます。

 
 
 運び入れられた大量の稲藁は、まず、縄を綯うのに都合よくなるように作業します。
 まず、稲藁加工のために余分な部分(原料藁の下葉)を取り除きます。わらすぐりという千歯扱の歯を間引いた専用の道具を使う地域もありますが、乙隈では写真のように馬鍬(まが:田んぼの代かき用道具)をひっくり返して、その歯の間に藁束を通します。馬鍬だけでなく、普通の鍬もひっくり返して使っていました。
 次に縄を綯うために柔らかくする作業を行います。この時に使う農機具を見せていただきました。この農機具は「藁打器」で、現在ではなかなか見ることが出来ない貴重なものです。
 藁打器では間に合わない一部の稲藁は重機を使い柔らかくされます。
 馬を作る際に最小な部位となるのが「差し縄」です。差し縄作りは、公民館前広場に大きなブルーシートを敷き、組内のご婦人方も交えて行われます。昼休憩終了後、作業が再開された頃から雨が降り出したために、近くの個人宅倉庫に場所を移して作業が続けられました。ほとんどが手作業で行われますので大変な時間が掛かります。今回は、午前7時半くらいから始まり、午後6時ごろまで行われました。馬本体に三番綱まで巻き付ける工程まで行い、次の日にも馬作りが行われました。
 この日の午前中、ご婦人2名が公民館内で鉢巻の準備をしていました。この鉢巻は乙隈早馬祭当日に参加者へ配られるもので、5反のサラシを裁断し、それを食紅で染め、60枚分ほど作るのは昔から変わらないそうです。
 

【馬作り(二日目)】

 
 
 
 平成29年10月15日(日曜日)も天候の都合で個人宅倉庫での作業となりました。馬本体作業の他、早馬祭の時に奉納する天満神社の注連縄や分け綱用の綱が綯われました。
 三番綱まで完了し仮止めされた本体に、今度は二番綱を5本巻きますが、綱が太くなった分、結ぶのが難しくなります。男性2人が全力で綱を引き、二番綱が本体に馴染むよう、別の男性が木槌で綱を叩いて押し込んでいきました。次に一番綱を巻いていきます。一番太い綱なので、男性6人くらいが一緒に作業をしなければなりません。特に難しいのが一番綱での男結びで、足で本体を押さえつけながら全身で綱を引き、固く結びます。男結びをした後、結び目の上を裁断し、その部分が馬のたてがみになるとのことで、長く綱を残します。たてがみ部分は長さをそろえるため、乙隈に生えていた青竹を切ってきて、それを縦に半分に割ったものでたてがみをはさみ、その竹を基準としてたてがみを刈りそろえました。

▼作業の様子(スライドショー)

 

【早馬祭当日】

 
 
  平成29年10月17日(火曜日)に天満神社で神事が行われました。午前10時半ごろより神事が始まり15分程度で終了しました。その後、区役員などの世話役の方たちの直会が行われました。
  この神事により早馬に魂が宿ると地元の方に教えていただきました。また、馬とともに作られた注連縄も同様で、神事終了後に当番の隣組である1組の方々により境内の注連縄が付け替えられました。付け替えられた注連縄は図の通りです。

▼▲図や写真はクリックで拡大します

 注連縄の付け替えは次のような段取りで行われました。
・注連掛石の古い竹も交換する。
・注連掛石に掛ける注連縄には、宮司より拝領した「紙垂(かみしで)」を3つ付ける。また、馬を作った際の「差し縄」を「マエダレ」として4つ付ける。
・神殿は図のように三方を囲む格好で注連縄を掛ける。「紙垂(かみしで)」「差し縄」は正面(南面)のみに付ける。
・手水舎は図のように四方を注連縄で囲む。手水舎の入り口である北面だけに「紙垂(かみしで)」「差し縄」をつける。
・「8 石柱 大神宮」「26 恵比須像」は、注連縄を張るだけ。
・注連縄は来年の早馬まで供えられている。
 作業は午後12時30分近くまで続きました。
 
  午後1時50分ごろに早馬の担ぎ手である子どもたちが天満神社に集合しました。子どもたちと1組の隣組長さんや世話役の方々が拝殿にあがります。皆が揃ったところで神殿に向かい拝礼し、座元の隣組長さんが作法について子どもたちに教えます。次の順序で出発前の行事が執り行われました。
 
・拝殿に向かい全員で二礼二拍手一礼を行う。
・全員にお神酒が配られる。少し口に含み残りは早馬にかける。この時、立てられた早馬の上部に塩が盛られる。
・早馬を拝殿前に出し、境内の人々に披露する。
・早馬を拝殿に戻し出発前の儀礼が行われる。
 「よーい、よーい」 拍手3回
 「よーい、よーい」 拍手3回
 「おっとせぇー」  拍手3回
 「わぁーーーー」  早馬を拝殿床に3回縦にして打ち付ける。
 
 

  午後2時8分にいよいよ早馬の地区内巡行が始まりました。まず、御幣を持った大人を先導役に神殿を反時計回りに3回廻ります。

 
 

  そののちに天満神社から出て薩摩街道沿いに乙隈区内を北上します。1組のところで左に折れ、今度は南下し頓了寺を通過して天満神社におよそ30分で戻ってきます。巡行ルートは図をご参照ください。

ルート図の説明:赤で記されたルートが現在のもの。茶色はかつてのルート。(小郡市教育委員会提供)

 
▼地区内を巡行する早馬(スライドショー)
 

 子どもたちが早馬を境内におろし、乙隈早馬祭の特徴である「子どもたちによる一番綱の争奪戦」が始まりました。今年は中学生男子が3名参加していましたので、かなり激しい争奪戦になりました。かつては子どもたちも多く大変熾烈な争奪戦が行われていたと地元の方に伺いました。

 子どもたちの周りには地区の住民の方々が大勢集まり、一生懸命な子どもたちに声援を送ります。やがて一番綱を奪取した子どもたちに、大きな拍手が送られました。小さな子どもが活躍すると一層大きな拍手や声援、笑いが起こります。たくさんの拍手や笑いが起こった争奪戦も午後2時50分くらいには終了しました。

▲一番縄争奪戦(スライドショー)

 

 午後3時くらいから1組のご婦人方によるかしわ弁当の配布が、おもてなしとして行われました。また早馬に参加した子どもたちや1組の方々より、境内に集まった人々に分け綱も配られました。分け綱は、家の屋根や玄関に飾り「魔除け」にします。