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大板井1区 名月さん
 

 平成28年9月15日(金)の夕方から夜にかけて大板井1区で「名月さん」が行われました。市史3巻には「旧暦8月15日の満月の夜、中秋の名月を観賞し、農作物を供えて感謝を表す行事である。月に芋を供えることから芋名月さんともいう。(中略)この晩、子供たちは各自重箱をもって『名月さーんなーあーげたの、あーげたなーらひかせんのー』と家々を次々と回り供え物を分けてもらう。菓子や団子等もあり、子供たちの楽しみの行事であった」と記載があります。

 私たちは、大板井区公民館にて区長さん達と落ち合い、大板井1区の名月さんについてお尋ねいたしました。
 その中で印象的ないくつかをご案内します。
・参加できるのは小学校6年生まで。現在、大板井1区の小学生は50名程度である。
・基本的には、大板井1区の子供たちが参加する。しかし、大板井1区から他地区に嫁いだ女性も名月さんには里帰りし、自分の子供を参加させることもある。
・男の子が家々を廻る際は、玄関口で「名月さん、あがったのぅ!」と、女の子は「名月さん、あがりましたか!」と言ってお菓子などをもらう。
・お菓子を子供たちに提供する家々は、この夜、玄関の明かりを灯しておく。不幸などがあり、お菓子等を提供しない家々は玄関の明かりを消しておく。
等々です。
 伝統的な行事なので、色々な約束事があるのだなぁと感じました。
18:10 
 公民館で詰めていると、子供たちの声が聞こえてきたので、私たちも区長さん達と一緒に地区内を廻り始めました。

 大板井1区の北部、長福寺あたりでも大勢の子供たちが、お菓子をもらっていました。

 

 また、10年以内くらいに建てられた新しい家々でも、様々な趣向を凝らして、名月さんの行事に参加していました。 
 
 昔からの家々を訪ねた時に、幸運にも昔ながらの名月さんのお供え様式を見ることが出来ました。この家のおばあさまに聞いたところ、この蒸かし芋は今年収穫された芋を使っているとの事でした。また、区長さんから「自分たちの子供時代は、このような芋や栗、柿を貰っていましたよ。」と教えて頂きました。

現在、標準的な家々においては、玄関にお菓子を置いて子供たちを迎えています。

 子供たちが貰うお菓子等は、10月の運動会まで、何もお菓子を買わなくても良いくらいの量です。びっくりしました。中にはみかんを運ぶ台車で貰ったお菓子を運ぶグループもありました。お菓子を貰う子供たちの表情は、生き生きと輝き、各家を廻るのも走って廻るほどでした。どの子も満面の笑顔でした。

 区長さんたちの名月さんをお世話する熱心さ、昔からの住民の伝統を伝える心、新しい住民の名月さんを楽しもうという姿勢などを目の当たりにした時、この行事は確実に続いていくだろうと思いました。