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霊鷲寺

<霊鷲寺ってどんなお寺なの?>

 霊鷲寺は「りょうじゅうじ」と読みます。

 松崎にある禅宗(臨済宗)のお寺です。

 寛文8年(1668)松崎藩成立後、藩主有馬豊範が旧三潴郡西牟田にあった霊鷲寺を松崎に遷しました。江戸時代、参勤交代で江戸へ向かう大名たちは、霊鷲寺の門前で籠や馬から降り、跪いて(ひざまずいて)拝んだと伝えられています。

 <見所>

①参道

 かつて、参道には樹齢300年を超える大きな杉(幹周りは両腕で抱えきれないほどの大きさ)が生茂っていましたが、昭和40年代の災害で、それらがことごとく倒れてしまいました。

 現在、参道にある杉並木は約30年前に植えられたものです。参道は楼門まで約100m続きます。街道から境内に向かう参拝者を杉並木の静寂が包み込むようです。

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②下馬石

 江戸時代、九州の有力大名である島津家、細川家などが参勤交代の為に薩摩街道を利用しました。この薩摩街道に面して霊鷲寺があり、参道の前には「下馬石」があります。昭和30年に補修されたもので、現在は1基ですが、かつては霊鷲寺入口の南と北にそれぞれ建てられていたそうです。『筑後河北誌』(柳勇 鳥飼出版社 1979年)には「往時江戸幕府に参勤の為九州の大々名島津家以下の諸大名や長崎奉行等は此の寺前を通過するに当たっては、悉く駕篭を下り、馬を降り、槍を伏せ拝跪して通過したと云う。蓋し当寺が歴代天皇の勅願寺の、寺格を有したからである。」と記されています。

 なお下馬石は、本来寺院の山門前や神社の鳥居前におかれ、「この先、乗馬したままの通行を禁止します」という意味があります。

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③楼門(山門)

 霊鷲寺の山号は瑞松山といいます。楼門2階に「瑞松山」の額が掲げられています。1階上部には葵の紋、そしてこの楼門を建てる際に寄進した三原家の紋がならんでいます。南側背面には階段が架かっており、かつては北側、南側に塀が続いていました。楼門は平成25年冬期より改修工事が行われ、平成26年春期に完成しました。1階柱部分は新しいヒノキ材を使っているものの「棟木(松)等々多くの部分は改修前の材木をそのまま活用している」とのことでした。

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④稲次因幡正誠の墓

 (いなつぐいなばまささね)

 稲次因幡正誠は元禄15年(1702年)家老稲次経雄の次男として生まれ、18歳で家老の列に入りました。時の藩主有馬則維(のりふさ)が年貢を厳しく取り立てた結果、重税に苦しんだ百姓は一揆を起こしました。国政に任ずる時の家老等が何も手を打たないなか、正誠が慨然として身を挺して藩主則維を諌め、重税の一部を廃して百姓を救い一揆を収束させました。正誠は疱瘡によって死去したことから、後年には正誠の墓に疱瘡除けの信仰が生まれ、疱瘡除けを願う参詣者が多かったと言われています。

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⑤サザンカ

 霊鷲寺楼門をくぐり右手にある樹木がサザンカです。フジノミネという種類。このサザンカは、かつて京都市左京区一乗寺門口町27に所在した詩仙堂のサザンカ並の規模があるとのこと。『今日の名花・名木』(淡交社)には「サザンカの銘木として京都で一番有名なのは、左京区一乗寺の詩仙堂のものであろう。」「石川丈山が寛永18年(1641)詩仙堂に隠棲したときに植えたといわれるから、樹齢350年に及ぶことになる」という記述があります。このことから霊鷲寺のサザンカの大きいことがわかります。毎年11月頃に壮麗な白い花を咲かせます。

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⑥本堂

 霊鷲寺の本堂は現在新しく建て直されていますが、平成6年(1994)に小郡市が行った調査の時点では江戸時代の建築が残っていました。その調査によると、本堂は方丈型本堂、平入、入母屋造、桟瓦葺でした。

 土間式の本格的仏殿のない三室二列の本堂という江戸時代後期の建物だったとのことです。現在の新しい本堂は以前の建物を意識して建て直されたものであり、軒瓦には以前のものと同じように笹竜胆(ささりんどう)の家紋がつけられています。これは有馬氏が正当な源氏の家系であることを示しているとのことでした。

▲笹竜胆の家紋

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<歴史>

 瑞松山霊鷲寺は松崎北端に位置している。松崎城主有馬豊範の菩提寺として旧三潴郡西牟田より移された。開基※1は西牟田弥次郎永家であり、開山※2はその子雲山元怡和尚である。戦国時代に西牟田氏は滅び、霊鷲寺にも盛衰があった。寛文8年(1668)有馬豊範が久留米藩の附庸として1万石を分封されて松崎城を築くに当り、霊鷲寺を松崎に移すことを幕府に請い、徳川氏の先霊を祀ることなどを条件として移転が認められた。

 ※1 寺院または宗派を創立すること。 

 ※2 寺院の創始者

  広辞苑第二版より

 
 
 

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